木蘭さんの「書く習慣」

アプリ「書く習慣」で書いた文章や日々の書写など

お題:優しくしないで

トオルと暮らし始めてもうすぐ3ヶ月。たまたま参加した飲み会で、共通の趣味がパズルだということで意気投合した。彼は漢字ナンクロ、私は数独ナンバープレース)と好みのパズルは違ったが、「相手が好きなパズル雑誌を毎月発売日に買ってくる」のが同居してから暗黙のルールとなっていた。

今日は、私が好きな数独のパズル雑誌が発売される日。夕方、定時で帰宅したトオルが近所の本屋さんで買ってきた雑誌を手渡してくれた。

「はいっ、これ!」
「いつもありがとう、トオルく…ん?」

何だか違和感を感じる。
毎月買ってる雑誌、こんなデザインだっけ?

「何かいつもの雑誌と違うような…もしかしてだけど間違えてない?」

「あぁ、それいつもと違うやつ。いつも買ってくるのって超難問クラスだから、解けない問題多そうだったから変えてみた」

「『変えてみた』って、勝手なことしないでよ。あれ、気に入って毎月買ってるんだから」

「でも、解けない問題ばっかりより解ける問題が多い方が楽しいと思って」

「それはトオルくん個人の意見でしょ。私はすんごい難問を苦労して解こうとするのが好きなの。たとえ今は最後まで解けなくても、時間をかければ解ける日が来るかもしれないんだから」

些細な事だったのに、話しているうちにだんだん腹が立ってきてしまった。私のことなのに、どうしてこんなふうに決めつけられなきゃならないんだろう。

「これ以上、優しくしないで‼️」

そう言って、私は自分の部屋に篭ってしまった。



翌朝、彼は休日にもかかわらず私よりも早く起きて朝食の用意をしてくれていた。

「おはよう、トオルくん。昨日はごめんなさい」

「おはよう。オレの方こそ悪かったよ。勝手なことしてごめん。そうだよな、パズルでも何でもその人なりの楽しみ方ってものがあるもんな。雑誌、後でいつものやつに変えてくるよ」

「ううん、あれでいい。っていうか、あの雑誌がいい。トオルくんが私のことを思って買ってきてくれたんだもの。また新しい楽しみ方が見つかるかもしれないし、解いてみたいの」

「そっか。じゃ、今度オレの分を買ってきてもらうときも違うやつを選んでもらおうかな。でも…」

「でも、何?」

「これ以上、『易』しくしないで」





…あぁ、はいはい。

出題レベルは下げてほしくないのね。

 

追記:

パズル、好きなんですよ。最近は、雑誌ではなくてスマホのアプリで解くことが多いです。

よく、毎日定時になると1問出題されるんですが、この出題レベルって直前まで解いているパズルのレベルと比例しているみたい。超難問を解いているときはそれなりに歯応えのあるのを出題してくるんですが、しばらく放置して久々に解くと易しめのものに変わってしまうみたいす。「もぉ〜、勝手にレベル下げないでよねっ‼️」という超個人的な怒りが書くきっかけとなりました。