木蘭さんの「書く習慣」

アプリ「書く習慣」で書いた文章や日々の書写など

お題: 天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、

そう言うと、あなたはいつも黙ってしまう。

待っても待っても、その後に続く言葉が

聞こえてくることはなかった。

私が、悪魔と化した大波にさらわれて

あなたとともに生きるのを断たれてしまった

あの日からずっと。

今日もまた、天気の話だけだと思っていた。

そのとき、気持ちを落ち着かせるように

1度深呼吸したあなたが口を開いた。

やっぱりもう一度…もう一度だけ

君に会いたい…会いたいよ…会いたい…

あなたが振り絞るように言ったのは、

決して叶うことがないと知っているから、

今まで心の奥にしまい込んでいた言葉。

この言葉を言えるようになるまで、

あなたがどれほどの涙を乗り越えて

強く生きてきたかを私は知っている。

時には風になり、時には陽の光になって

あなたの一番近くにいるのだから。

また来るね、とあなたはいつものように

振り返りながら去って行った

少しだけ強い日差しと突然吹いた風に

あなたは気づいてくれただろうか。

さよなら、あなた。いつかまた会おうね。

 

追記:

お題更新に間に合わなかった〜‼︎  最初は男性側から書いていたのですが、今は亡き女性の側からの視点でまとめてみました。ちなみに、今は台風接近が気になっているので天気の話はとても重要です。

お題:昨日へのさよなら、明日との出会い

毎日19時、お題が更新された瞬間から私の苦悩は始まる。来る日も来る日も、まるで宿題に頭を抱える小学生みたいだ。

とにかく、思いついたことをiPhoneのメモアプリに書き連ねていく。創作モノは、いくつかのシチュエーションを用意して書き出しとキーフレーズを決める。そして、その間を埋めるかのように文章を肉付けしていく。

ところが、どうしてもその先を書き進めることができないときがある。ジグソーパズルに例えると、そんなときは「ピースがはまらない」ときだ。一旦、そのままにして別のシチュエーションで書き直してみる。すると、その先から結末まで一気に書くことができたりする。

こうして「ピースがハマった」とき、文章は完成する。見直して見直して、もう1度見直して…とまで念入りには確認しないが、「これでよし!」と思ったところで文章を投稿する。その瞬間、私は前日のお題に別れを告げ、翌日のお題に思いを馳せるのだ。

それにしても今日は、パズルのピースがハマるのが早かったなぁ。それではまた、明日19時に新たなお題でお会いいたしましょう。さようなら。

 

追記:

『書く習慣』アプリは、毎日19時にお題が更新されると前日のお題は消えてしまいます。だから、「その日のお題はその日のうちに」が絶対条件だと思って日々書いてます。ちなみに、下書きは次回以降のお題にも活かせるかもしれないのですべて保存しています。

お題:透明な水

「透明な水 イラスト」とネットで調べると、検索画面は濃淡取り混ぜた青色で溢れていた。

「じゃあ「透明」っていったい何なんだよ?」と、デザイナーの小橋は思う。もともと作品制作のための参考資料として調べていたのだが、もはや作品そっちのけで「透明=青?」の件が気になって仕方がない。

「先輩、買い出し行きますけど何かありますか?」

突然、後輩の陰山が声をかけてきた。彼は、周りの誰かが煮詰まっていそうだと見るやいなや、そのフットワークの軽さを活かして買い出しの御用聞きにやってくる。仕事も早いし、気遣いもできる良き後輩だ。

「あ〜、そうだなぁ。透明な水、じゃなくて透明な麦茶頼むわ」

「は? 透明な麦茶って何すか、それ⁈」

「いや、水ってさ。透明だけど、絵で描くときは青く塗ったりするじゃん。麦茶だって一見茶色く見えるけど、実は透明なんじゃないかなぁって」

「…わかりました。先輩、そんな意味不明なことを口走るほど疲れてるんですね。なおかつ、麦茶が欲しいと。はいっ、行ってきます‼︎」

そう言うと、陰山は外へ駆け出して行った。

たしかに、冷静に考えると「透明な麦茶」なんてあるのだろうか。わけがわからない。でも、透明な水に麦茶のパックを入れて茶色くなっていく。元を正せば水も麦茶も皆同じなのだから、透明でもおかしくないんじゃないか。

って、この考え方がもう意味不明だよなぁ…と小橋の脳内が混沌としてきたころ、陰山が買い出しから戻ってきた。彼の両手には、他のメンバーからも頼まれたであろう、大量の飲食物が入ったコンビニ袋がぶら下がっている。

「はい先輩、ご注文の麦茶と、これ」

そう言って、彼は2本のペットボトルを小橋に差し出した。1本は明らかに麦茶だが、あと1本はミネラルウォーターのように見える。

「なぁ、この透明なの、何?」

「紅茶です、透明な紅茶。たまたま売ってたんで買ってみたんです」

透明な紅茶⁈

小橋は、ますますわけがわからなくなってきた。とりあえず、一口飲んでみる。たしかに、紅茶の味っぽい。今度は、目をつぶって飲んでみる。紅茶と言われれば紅茶の味だが、何か別の飲み物の味に似ているような気がしないでもない。

気を取り直して、麦茶を飲む。

うん、これはもう完璧に麦茶。見た目も味も100%麦茶だ。一口飲んだだけでホッとする、いつもの味にいつもの色だ。

「やっぱ、透明だと落ち着かないわ」

と言いながら、小橋はどちらも飲み干した。「さ〜て、やりますか」と大きく伸びをした彼の傍らには透明なペットボトルが2本キラキラと輝いていた。

 

追記:

透明な紅茶って、今も売ってるんでしょうか。たしか、透明な抹茶ラテというのもあったような…ちなみに、麦茶は私にとって日々欠かせない飲料水です。そろそろ1.5〜2.0Lくらい持ち歩かないと足りなくなる季節ですね。

お題:理想のあなた

お題が出たらすぐ文章が書けること。

できればお題発表後、30〜1時間くらいで1つの作品が書けたらこの上なくカッコいい。

しかも、「あなたの作品をまた読みたいんですっ‼︎」っていう意思表示をしていただけるようなものが毎回ご提供できたらば、それはもう小躍りするほどだったりするのだ。

しかし、現実は厳しい。そんな上手くいくはずもなく、今回も、次のお題発表まであと3時間を切っている。

理想からは程遠い姿だが、テーマに沿った文章を毎日書く生活が1ヶ月以上続いているのには自分でも驚いている。その前までの私は「筆不精な物書き」だったからだ。

書きたいことはあるが、どこでどんなふうに書き綴っていけばいいのか。迷っているうちに、気がつけば時間だけが過ぎ去っていった。そんな日々がもう何年も続いた頃に出会ったのがこの『書く習慣』だった。

このアプリと、これ利用して各々の作品を発表している皆さんが私にとっての「理想のあなた」だ。あなた方に少しでも近づけるよう、今はとりあえずお題に沿って毎日書き綴けよう。

で、いいものが書き続けられたら密かに小躍りしちゃうような、そういう物書きに私はなりたい。

 

追記:

このお題、ホント書きあぐねて他の人の文章を読もうとしたら、出題後すぐに書いている人の多いこと多いこと!この方々および「筆不精な物書き」を毎日書く習慣を与えてくれたアプリに敬意を表します。マジ感謝です。

お題:突然の別れ

いつかこんな日が来ることはわかっていた。でも、それはもうちょっと先のことだと思っていた。さよならも告げず、急に旅立ってしまうなんて。

いつの間にか、一番近い存在になっていた。手を伸ばせば、いつでも触れることができた。そばにいるのが当たり前になって、ほんの少しの間でも姿が見えないと、また会えるのだろうかとたまらなく不安になった。

きみがいなくなったこれからの日々を、どう過ごせばいいんだろう。まだしばらくは、きみと過ごしたあの場所で、よく似た面影を探してしまうだろう。季節が巡り、いつかまた出逢うかもしれないその日まで…

さようなら、期間限定メニュー。

 

追記:

マクドナ○ドの期間限定メニューって、店に行ったら既に販売終了してるパターンが多いんですよね。シーズンに1回は食べられるんだけど、次に行ったときにはポスターすら貼ってない。そんな悲しいお別れを書きました。

Midnight Rainbow

恋をしたから小説家になった、

なんて言ったらあなたは笑うでしょうか。

なかなか眠りにつけない10代の頃、私の傍にはいつもラジオがありました。ボリュームは、いつも絞り気味。流れてくる声も音楽も、微かに耳に入る程度で聴くうちに、いつの間にか眠ってしまうのが日常でした。

その日もやっぱり眠れなくて、いろんな番組をちょっとずつ聴いていた午前2時。

「はじめまして。今日から始まるこの番組、よかったら最後までおつきあいください!」

それから午前5時までの3時間、私はいつもよりボリュームを上げ、彼の声に耳を傾けていました。何故かわからないけれど、彼の声は私の心の奥まで真っ直ぐ届く特別な声に感じました。

8年間続いた番組が終了する日、私は初めて番組宛にメールを送りました。番組内で読まれることなど期待していませんでしたが、あなたは番組の冒頭でそのメールを取り上げてくれました。

「明日、世界がなくなるとしたら何を願いますか?」

あなたの願いどおり、その日の放送は無事終了しました。私はというと、このままじゃ心臓がもたないというくらいドキドキして、ますます眠れなくなってしまったことを覚えています。

あなたに感じた特別な感情をどう表現すればいいんだろう。私は、架空のラジオ番組と登場人物でストーリーを創りました。それが、小説家としての私のデビュー作。そして、少しずつ自分の作品が知られるようになってきた今、あなたがパーソナリティを務めるラジオ番組にゲストとして呼んでいただけるとは。

明日、あなたに会ったら何から話そう?緊張しすぎて言葉が出ないかもしれない。でも、どうしてもこれだけは伝えなくちゃ。

「あなたに恋して小説家になれました」って。

 

追記:

スマホアプリ『書く習慣』のお題【恋物語】をテーマに書いたものです。ちなみに表題の『Midnight Rainbow』は作中に登場するラジオ番組のタイトル、という設定。真夜中2時から始まるから真夜中の虹、というわけです。ちなみに、以前書いた作品ともリンクしてます。

https://moklen.hatenablog.com/entry/2023/05/07/114756

お題:真夜中

「かぁしゃ〜〜〜〜〜ん‼︎」

真夜中、眠っているはずの息子が大きな声で叫ぶ。夢でも見ていたんだろうか。幼稚園に通うようになってから、時々こういう夜がある。

「ハヤト、どうした?」

俺は、息子の背中をさすりながら名前を呼ぶ。  

「かぁしゃんは? かぁしゃんはどこ?」

息子は真っ暗な部屋の中、手探りで自分の母の行方を探そうとする。でも、彼の探す「かぁしゃん」はここにはいない。

ハヤトが生まれる前から闘病を続けていた妻のチハヤは、2年前にこの世を去った。幼稚園に通う我が子の姿を、彼女は知らない。

だが、彼が生まれて1年が経ったころから彼女はあるものを作り始めた。菜の花とモンシロチョウの刺繍がついた弁当袋は、お世辞にも器用とはいえない彼女が作り上げたものだ。ハヤトが幼稚園に通うようになったときのためにと、時に自らの生命を削るように必死で仕上げていた。

「ハヤト、かぁしゃんはここだよ」

俺は、部屋の電気を点けて幼稚園バッグに入っている弁当袋を取り出してハヤトに渡した。ハヤトは愛おしそうにその袋を抱きしめ、「かぁしゃん…」と安心したように言った後、間もなく眠りについた。

チハヤ、君の愛の力は絶大だ。以前、夜遅くまでこの袋を作っていた君に「僕の愛があれば、君は何でもできる」って言ったのを覚えているかな。でも、君の命懸けで遺した愛情のおかげで、僕はハヤトのためなら何でもできる。おそらく、今日みたいな真夜中の光景はこの先何度もあるだろう。そのたびに、ハ君と僕がどれほどハヤトを愛しているか伝えて乗り越えていくつもりだ。

だから、これからも僕らのことを変わらず見守っていてほしいんだ。頼むよ、チハヤ。

 

追記:

モンシロチョウの回(https://moklen.hatenablog.com/entry/2023/05/11/111000)と昨日(https://moklen.hatenablog.com/entry/2023/05/17/223811)に続き登場の親子です。ちなみに、ハヤトくんのお父さんはホクトさんといいます。ホクトさんとチハヤさんの子どもなのでハヤトくん、なのです。